2020年 02月 18日
ちゅん太の友達 ~ 陽の当たる場所
「台千駅と流布川駅の間で停電が起こり
新幹線が線路上で停止しました。
鳥が衝突した模様です。
ただ今、職員が現地へ向かい
復旧に向けて作業を始めました。
沢山の乗客は.・・・」
ちゅん太は何日も何日も
約束した待ち合わせの場所に行ってみましたが
あいつに会うことはできませんでした。
駅前の広場へも行ってみたけれど
いつもと変わったところはなく、
駅長が難し気な顔をして
何やら考え事をしているのが
執務室の窓から伺えただけでした。
ちゅん太は、
駅前の広場をちょこちょこと歩き回りながら
あいつのことを思い出していました。
あいつのねぐらは
この駅の北側の
丘の上にある森の中で、
そこで両親と暮らしてた。
毎日、父さまと手分けして
暮らしの糧を探すことが
あいつの仕事だ。
何にでも一生懸命で
簡単に諦めたり
弱音をはいたりすることをしない
強い心の持ち主だ。
あいつには
とても大事にしている場所があって、
オレも何回もそこに連れて行ってもらった。
そこは、陽当たりの良い土手沿いに建つ
木造アパートの屋根の上。
彼方にある港まで広がった街並みの中を
列車が往来するのが良く見える場所だ。
沿岸方面へ往き来する
青い色の車両。
緩やかな弧を描いた長い車列の貨物列車は
ガタンガタンと鈍い音をたてながら
通過していく。
「あれは、いー 2○○(まるまる)けい」
「お!'いーでい'がただ‼」
どの車両をも、最後は点になって消えるまで
追って眺めた。
中でも、
高架橋の上を真っ直ぐに伸びた線路上を走行する
高速車両は格別で
剛勇な走りは
日々、表情を繊細に変化させながら
目の前を通過していった。
屋根の上からの眺めは
鉄道を中心とした街のジオラマを見ているかのようで、
列車が走れば走る程
街は輝き、躍動していくように
感じられて仕方なかった。
ちゅん太はハッとしました。
あいつが好んだこの場所は
あいつ自身を支えた場所で
兄弟と戯れるかのように
あいつの心を和ませる場所だったのだと
今、はっきりと分かったのです。
冬から春に
季節が変わろとし始めて
街も忙しなさを増してきた頃のこと、
例年とは違って
地面がカタカタと揺れることが
多くなっていました。
鳥も、他の動物たちも
落ち着きがなくソワソワと動き、
太陽の光が季節外れに眩しい日々が
続いていました。
そんなある日の午後、
夕方にはまだ少し早めでしたが
ちゅん太はねぐらに向かって飛んでいました。
あいつは仕事を早々に終えて
いつものあの場所から鉄道を眺めていました。
その時、ごぉーと地面が唸り
大きく、更に更に大きく地面が軋み
空気が裂かれるように
全てのものが一斉に揺れました。
その時間は長く、一向に収まりません。
やっとの思いでねぐらに戻ったちゅん太は
家族と一緒に木々の葉の茂みの中に
潜りこみました。
あいつは、屋根の上で踏ん張って
暴れ馬のような揺れに耐えました。
揺れが収まってそっと目を開けた時、
生き生きと輝いていた街は一変し
戦争でも起こったのではないかと思える程に壊れて
色が抜け落ちて、
白黒の世界になってしまったようでした。
あいつは、暫くその景色を呆然と眺めていました。
そして、大きな地震がくる直前までは
いつもと変わりなく走っていた
「いー 2○○けい」も「いーでがた」も
そして高速鉄道も、
全く来なくなっていることに気が付きました。
「どうしたんだろう」と考えているうちに
雪が舞ってきたので、
後ろ髪を引かれる思いで
ねぐらに戻りました。
するとそこは滅茶苦茶に壊れていて
しんと静まり返り
鳴き声ひとつしませんでした。
あいつは、父さまと母さまの帰りを待ちました。
陽が落ちて辺りが暗くなって
闇が漆黒に変わっても
その帰りを待ち続けました・・
by aiotsunaide
| 2020-02-18 03:40
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