2020年 03月 16日
再び、繋がる。
淡い桜色をした列車が
北国の車両センターにやってきたのは
今年、正月を過ぎて間もない
1月上旬のことでした。
こつこつとセンターの中で整備されて
時には、試験的に走行をしながら
運行が再開されるその日まで
大切に保管されてきました。
かつて、
この地方を大津波が襲いました。
多くの街を飲みこんで
多くの死者と行方不明者がでました。
大津波は
発電所をも飲みこんでしまったので
そこから
細かく無数の光の針がそこいら中に散らばって
刺さってしまいました。
その光の針は
微細でありながら鋭く
破壊力は容赦ないものでした。
際限を知らずはびこって、
やがては、
巨大な山脈のように立ちはだかり
人々や物の往来を
遮ったのです。
隣町へ行くことは勿論、
そこで暮らすことすら
できなくなってしまいました。
以前の暮らしを取り戻すためには、
その針山から
1本1本、針を取り除き
崩していかなくてはなりません。
9年間
抜き取り続けました。
線路が通るところや駅舎の周り
駅に通じる道路を
猛暑の日も
雨の日も
多く人が力を合わせて
一生懸命に抜き取りました。
桜色をしたあの列車が
満員の乗客を乗せて
再び行き交う光景を
何度となく
思い浮かべながら
抜き取っていきました。
そして迎えた
運行再開の日。
時刻表に朱色で書かれた
'特急'の文字。
「お帰りなさい」
「ようこそ」
温かい言葉の出迎えを
沢山受けて
誇らしげに走りました。
職務を終えて
車両センターに帰還した
10両編成の車両。
冷たく降る雪や雨が
大津波の当日を思い起こさせて、
「緊張しながら走ってきただろうに。
今日は、ゆっくりと休むがいいよ」
と、思わず
声をかけたくなってしまいました。
再び紡ぎ出す
この路線の新たな歴史。
「今日は、
そのスタートラインに
過ぎないのかもしれない」
そう感じながらも、
桜色の車両と共に
導かれる出会いを思い描きながら、
明日の運行に向けた点検作業に
取りかかりました。
by aiotsunaide
| 2020-03-16 06:02
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