2020年 04月 28日
20年後の盆栽
以前、仕事でお世話になった方から
いまでも定期的にメールが届く。
花と写真がお好きな方で、
椿や沈丁花、金木犀、ピラカンサの実、等々
1輪に特化して
花の角度や採光、
露が葉先に絶妙なバランスで留まって
自然が作り出す
絶妙な球体の美しくしさを、
露に反射して光る陽の光をも
際限なく受け入れて、
花の最も美しい姿をカメラに収めて
送ってくださる。
先日のメールは
穀雨の頃の雪柳。
この時期に降る雨は
作物の実りをもたらすための
大切な雨。
そんな雨に濡れて潤った
白い可憐な雪柳が
清楚で美しく写されていた。
普段はあまり返信はしないのだが
余りにも美しかったので
短文の感想を送った。
予想外に短時間で返信が届き、
何度かやり取りするうちに
雪柳の盆栽の話になっていた。
挿し木から育て上げていく盆栽は
20年から30年は要するそうだ。
「今から初めても
臨終を迎える前に
完成を見届けることができるだろうから
是非、おやりなさい」
と指南を受けた。
翌日、挿し木に適した土を
DIYショップから早速調達し、
12本の若木を準備した。
少なくともこれから20年間程
共に暮らしていく、
まだまだ幼い仲間の成長を願いながら
そーっと柔らかな土の中に挿していった。
盆栽に成長したら
駅構内の改札口付近に飾ろうか、
いや、待合室内がいいだろうか、
20年後を想像する。
いや、ちょっと待て。
20年後にこの駅は残っているだろうか。
駅長がAIにとって変わられて
きっぷはICカード
列車はリモート操作による運行
沿線の案内はスマートフォンのアプリ・・
人との接触を最小限に抑えつつも
合理的かつ効率的な移動が可能となった世界で
この、手塩にかけて育てた盆栽に
気付いてくれる人はいるのだろうか。
ひとやもの動くスピードが上がり
目的地にまっしぐらで
わき目もふらずに進んでいく。
想像する近未来の社会。
穀雨の頃には恵みをもたらす雨が降り
芒種の頃には穂の出る作物の種を巻き
寒露の頃には収穫に追われ、
澄んだ秋の夜空に月が青白く輝く、
日本の風土。
それらが心地よく融合された鉄路を
思い浮かべながら
雪柳の若木達に
今朝も水を注ぐ。
by aiotsunaide
| 2020-04-28 08:15
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