2020年 06月 03日
初夏の彩りを乗せて今日も走る
緑色で縁取りされた白い車体に
ひと際大きな窓が目立つ。
窓の下に引かれている
赤くて太い一本の線が
車体と調和していて印象的だ。
それはまるで
お神楽の化粧の、
あのきりっとした紅のようにも見えた。
2両編成の列車には
少し腰をかがめた老婆が
ポツンと窓の外を見ながら
座っていた。
他に乗客はいないようだった。
車窓の外には
海跡湖に浮かぶ養殖用の黒いブイが
碁石のように並んでいて、
陽の光を受けた湖面は
凪で穏やかで
鉛色に近い青い湖水を
満々とたたえていた。
海岸線に沿って
小刻みにカーブする線路を
ディーゼルを唸らせながら
走る2両の車両は、
この地域で一番大きな駅を過ぎると
今度は田園を抜けて
山手に向かって走ることになる。
先ほど停車した大きな駅から
4才くらいの男の子と母が
乗車してきた。
買い物の帰りなのだろう。
男の子は嬉しそうにしながら
店の紙袋を握りしめていた。
山手に向かう線路は真っ直ぐで
ディーゼルの音も
ずいぶん軽やかに聞こえるようになった。
男の子が
紙袋の中から
ジュースを取り出して、
ストローを使って飲みながら
見ていた車窓からの景色には
青々と育ってきた稲の横に
減反で作変えした麦が小麦色となり、
その穂先の細い髭は
陽の光を受けて
キラキラと白く輝やいている。
この辺りまで来ると、
広がる畑は
麦風に吹かれて
大きくザワザワとなびいていた。
お神楽の化粧を施したような
ふたつのちいさな車両は
海の恵みと山の恵みの
どちらも抱え込みながら
日常のかなで
今日も走っていた。
※モデル:キハ110系一般形気動車
陸羽東線色
by aiotsunaide
| 2020-06-03 09:02
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