2021年 06月 08日
みちのくの空気
ケヤキ並木の葉の緑色が
濃く、その深さを増して、
海から吹き込む
少し冷えた風に
葉がざわざわと揺れる。
葉音が
夏祭りのざわめきを
記憶の中から呼び起こし、
夏が近いことを
肌に感じる。
陽に照らされた早苗の間を
カモやサギが
餌を求めて
スイスイと移動する水田は
緑色の絨毯と化す。
夕暮れには
ケコケコと蛙の鳴き声が
カタンカタンと過ぎ去る
4両の列車の走る音と
重なり合い、
駅舎は夕日で赤く染まる。
海岸線を歩けば
磯の香が
五臓六腑に
沁みわたってゆき、
峠のホームで列車を待てば
鶯の鳴き声と
キツツキが木を叩く音との
掛け合いに
一瞬、時を忘れて聞き惚れる。
この時期に見られる
景色だ。

城の石積みのような柱に囲まれた
この空間に腰を下ろしてみると、
みちのくの空気に
触れているような気持になる。
重厚な表具の付いた
箪笥や食器棚は、
古くから匠によって伝承されている
民芸品であり、
こけしは、
年輪を重ねていくと
胴体をあめ色に変化させて
更にその趣きと深みを増す、
民芸品の代表的な存在だ。
みちのくの風土や空気に包まれて、
これらの民芸品と共に
人々も
育まれてきたのだろう。

大きな駅に隣接したこの空間は、
東北の各地で見られる
素朴で、実直で、
どこか懐かしい風景への
プロローグ。
みちのくの夏は短い。
「どうそ、その列車に
お乗り遅れなどが
ございませんように」
と案内しているかのように、
改札口へと誘うエスカレーターが
ゆっくりと
上っていった。
撮影:2021年5月23日/仙台駅東口
(垂れ幕はこの期間の催事のものです。
この空間では、様々なイベントが
開催できる仕様になっているようです。)
by aiotsunaide
| 2021-06-08 23:39
| 駅
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