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港町のレストラン

海が見下ろせる

賑やかに人々が集まる場所から

少し距離を置いた路地の一角に

そのレストランはある。

と言っても、

最寄りの駅から歩いても

それ程離れていない場所だ。

幾度となく足を運んだ事があるこの港町だったが、

このレストランを訪れるのは今日が初めてだった。


レトロモダンな店は、

初老の白髪の男性と

そのお嬢さんらしき女性と2人で、

を切り盛りしているようだった。

ふたりともシンプルな紺色のエプロンを身に着けて

静かに微笑んで店に迎え入れてくれた。

シェフと思われる初老の男性は寡黙で、

来客にも拘わらず

ゆっくりと椅子から立ち上がって、

そうっと厨房に向かう。

少し足が不自由そうに見えた。

その背中からは、

長年の経験からくる誇りと職人気質が感じられたが、

年齢には勝てない

何かもの悲しさのようなものも、滲みでていた。


しばらく経って運ばれてきた洋食の味は格別で、

熱々の湯気が立ち上る料理が

海風に当たって少し冷えた腹に染み入って応えた。

タイミングよくコーヒーが運ばれてくる。


ここは、シェフと女性の息の合った両輪で進んでいるレストラン。

満たされた空腹にコーヒーの香りが

より居心地の良さを増していった。


駅へと向かって店を出た。

海風はさっきと同じように冷たく

身体をすり抜けてゆく。

改札を通ると、

2編成の気動車がホームに着いていた。

急いで帰る必要もなかった

もう少しこの余韻に浸っていたい気がして、

遠回りにはなるけれど

この列車で帰ろうと思い、迷わず

列車の入り口に足を運んだ。


港町のレストラン_e0416525_23422867.jpg

















 ※撮影:2021/10/10

     石巻駅




















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by aiotsunaide | 2021-10-13 23:57 | 物語 | Comments(0)

藍と共に観る路線風景


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