2021年 12月 14日
そして、未来へ

「出発、2分前!」
機関士長らしき人が
低音で力強い声を
静かな山々を震わせるように
響かせた。
乗務員が
作業を仕上げようとしている。
「みなさん、ご乗車ください」
ホテルマンのような
丈の長い上着をきっちりと着こなした車掌が
優しく声をかける。
乗客は、
小走りに
それぞれの座席に向かって
旅客車に乗り込んだ。
やがて、機関車は
蒸気を吹き上げ、高く黒煙をなびかせて、
ゆっくりと動き始める。
徐々に速度を上げてゆき、
その速度は思いとは反して速く、
あっという間に
目の前を通り過ぎて行ってしまった。
旅客車(PDC)に描かれた真鍮の星座は、
夕日を浴びてキラキラと
でも、どこか寂しそうに輝いて、
車列は緩やかに弧を描きながら
山の向こうに隠れて
見えなくなってしまった。
さっきまで、
あれほど活気づいていた停車場は静まり返り、
時間と共に流れる空気の音しか聴こえなかった。

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「SL銀河」は2023年の春に
運行が終了することが公式に発表されています。
思い出がたくさんある列車がまたひとつ
運行を終えるということは、
率直に寂しく切ないものです。
汽笛が山に響かなくなり
この停車場にPDC(旅客車)が停車しなくなっても
この地を訪れて、
空気や風や、太陽のぬくもりや、
清流の流れる音を
五感のすべてを使って
感じ取ってゆこうと思います。
*撮影:2021/11/28
JR釜石線(ドリームライン銀河)
宮守駅(無人の駅です)
by aiotsunaide
| 2021-12-14 23:57
| 橋
|
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